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誠論(せいろん)・時事論集
【1997年4月】美しい国づくり
〜観光立国をめざして
1995(平成7)年から甲府湯村温泉郷の活性化のお手伝いをしたり、観光ドライブインの方々と
山梨観光情報協同組合を今年設立したり、県内の旅館組合の青年部の総会で記念講演をしたりと
山梨という地域柄か観光関係とのお付き合いが増えました。
観光政策について、以下考え方をまとめました。
梅から桜、そして桃と花見の季節となりました。行楽やレクレーションに出かける時でもあります。
いま人、物、金、情報が、地域や国を超え、地球規模で移動する高度移動社会を迎えています。
そして、政府の世論調査で明らかなように、物の豊かさより心の豊かさが重視され、仕事だけではなく
自然や家族とふれあい、高度移動社会があいまって、観光レクリエーションなどのゆとりある余暇生活を
楽しむ傾向も強まっています。
松下幸之助氏はすでに、昭和27年に日本の進路として、技術立国と観光立国の2つをあげ、
観光大臣や観光省の設置を提案していました。
これから資源のない日本は、貿易・技術立国はもちろんですが、四季に富み、山川草木動植物など
自然環境に恵まれた日本の個性を生かした、美しい国づくり=観光立国をめざすべきだと思います。
伸びる国際観光
95年の国内観光は、宿泊・観光レクリエーション旅行をした延べ人数が約1億8700万人
(1人当たり平均1・49回、前年比約8%減)と推計されています。
一方、国際観光は、円高の影響もあり、日本人海外旅行者数が1530万人(前年比12・7%)と
史上最高を記録しました。不況にもかかわらず、さらに記録を更新するのは確実といわれています。
まさに観光レクリエーションの時代の到来といっていいでしょう。
しかし現状は、貿易では大幅な出超ですが、観光面では逆に大幅な入超です。95年の訪日外国人
旅行者数は、円高の影響等により335万人(前年比3・5 %減)です。4・5倍の開きがあります。
観光の空洞化
国内観光は、長期的には着実に旅行者数が増加しているものの、93年が2億400万人でピークと
なり、近年は海外旅行へのシフト=観光の空洞化が懸念されています。
総理府広報室の余暇と旅行に関する世論調査によると、国内観光旅行の不満の一位は「人が多く混雑
している」30・5%であり、「目的地で飲食、土産物代見物料が高すぎる」20・5%、「宿泊費が
高すぎる」19・5%、「交通費が高すぎる」15・7%です。計55・7%が、費用の高さを不満の
理由に上げています。
このため、国内旅行の低価格化、多様化したニーズに合った旅行の開発、例えば「エコツアー」
「主婦向けの日帰りツアー」「ベッド&ブレックファスト」などの取り組みにより、国内観光の振興を
図ろうとしています。
赤字のホテルの割合は、58・9%、赤字旅館は50・7%(94年)と過半数を超えています。
さらに、円高傾向において低迷している外国人旅行者については、来日を促進していく施策が求められて
います。
95年6月に観光政策審議会(運輸大臣の諮問機関)は観光をめぐる昨今の状況の変化に対応して、
「今後の観光政策の基本的方向について」を答申し、21世紀の観光を創造するための具体的方策の提言等
を行いました。
政府の対策
それは、「ゆとり観光立国」をめざし障害者高年齢者等をはじめ国民すべてが旅行を楽しむ社会を実現
するために、国内旅行の低価格化、芸術・工芸・スポーツ・グルメ等の体験型観光、家族を中心とした
長期滞在型の旅行の開発などの振興策を提唱しています。
それを推進するために「デスティネーション開発協議会」を岐阜・滋賀・山形に設置し、
「国内観光促進協議会」「観光交流により地域の国際化に関する研究会」を開催し、「観光サミット」の
開催を検討したりしています。
これを受けて運輸省は、国内観光の振興、訪日外国人の増加のための推進体制整備の検討をしています。
また、赤字ホテルや旅館の対策として環境衛生金融公庫から長期低利の融資が行われています。
北海道がNO.1
JTBは、95年度の国内宿泊実態調査をまとめました。これは、JTBの全国の支店代理店などで
取り扱った契約宿泊施設の販売実績を集計したものです。
都道府県別の延人員ランクでは、北海道が1位、以下京都、静岡、東京、長野千葉、沖縄、長崎、
神奈川、石川となっています。私たちが住む山梨県は24位と中位にとどまっています。
国内の旅行先として、北海道が依然として高い人気を得ており、京都や東京は観光や修学旅行だけでなく、
ビジネス、国際会議などの幅広い需要に支えられています。
地区・都市別では、京都市が1位、東京23区が2位、以下札幌、舞浜、大阪長崎、那覇、鬼怒川、
福岡、恩納村、熱海となっています。大都市の吸引力の強さが証明されています。また、東京ディズニーランド
のある舞浜が4位となり、その集客力は福岡県全体に匹敵し、国内最大級の観光地としての地位を不動の
ものにしています。10位の恩納村は沖縄の国際レベルのマリンリゾートとして人気が高い場所です。
県内関係では、43位に河口湖が入っています。
8位鬼怒川、11位熱海は言わずと知れた有名な温泉地であり、地区別50位以内の半分が有名な温泉地で
占められています。大都市をバックとした大規模温泉地の強さが出ています。日本人のレジャーに温泉は、
やはり欠かせない存在のようです。県内関係の温泉地は、残念ながらランク外となっています。
停滞する山梨観光
私たちの住む山梨県は、3つの国立公園と1つの国定公園に囲まれ自然環境が豊かで、信玄公などの
歴史遺産もあり、サクランボ、桃、葡萄、ワイン、宝石など特色ある地場産業もあり、観光資源が豊富だと
いわれています。しかし、現状はJTBの調査にみられるように、47都道府県中24位にとどまっています。
また、(社)日本観光協会がまとめた「全国観光動向(平成6年)」によると観光地入込客統計でも、
山梨県は年間3720万9千人で27位にとどまっています。10年前を100とすると、109・5%の伸びで、
横ばい状態です。全国の伸び率順位は42位で、大都市の隣県にしては、完全に落ち込んでいます。
観光立県をめざして
山梨県は、観光立国日本をリードする観光立県をめざすべきだと思います。
しかし、前述のように観光入込客数が停滞し、消費額は91年の2175億円がピークで、94年は
1866億3300万円と300億円も落ち込みました。いま非常に厳しい状況を迎えています。
観光業に携わる方が、自己責任・自助努力していくのは当然です。しかし業界だけの問題にとどまらず、
県が提唱している「ビジターズ・インダストリー(集客産業)」にように、地場産業の振興と密接に関わり、
また県民にとっても住みやすい生活環境の創造につながります。
来年平成10(1998)年長野冬期オリンピック、平成14(2002)年サッカーのワールドカップの開催、
平成20(2008)年夏期オリンピックの誘致運動など、今後近隣で国際的なビックイベントが開催されます。
山梨県を真の観光立県にするために、より一層の官民一体の観光態勢の強化が急務です。
具体的には、知事と直結した「観光立県推進室」を設置し、農務、林務、環境土木、商工など、観光に関わる
部門との総合的な企画調整を行うべきです。
それは国にも同様なことがいえます。運輸省観光局では限界があります。松下幸之助氏が提唱したように、
観光省と観光大臣の設置は不可欠だと思います。行革とは、数を減らせばいいといいのではなく、時代や国民の
ニーズに対応して行政を変えていくことではないでしょうか。
そして、91年に立案された「山梨県新観光基本計画」を見直すべきです。88年以来行われていない
観光山梨の総合的な実態調査を行い、その調査を基に、有識者や観光業だけの審議会ではなく、県民の方々
などにも幅広く参加して、立案し直すべきです。
また、山梨県の観光費は6億円で、歳出比率は0・11%で全国39位です。トップは秋田で1・5%
(112億円)高知1・4%(83億円)、千葉1・1%(180億円)です。観光立県をめざす以上、
観光費の充実は欠かせません。
美しい国づくり
さらに、現在大部分を占める個人客に対応して、
・案内版やガイドマップを充実させ、
・きめ細かく観光資源の発掘を行い、
・隣県と協力して、観光客のタイプにあった新ルートを設定、
・ほうとう以外の郷土食を開発普及させ、
・交通渋滞緩和のため観光地をつなぐシャトルバスを導入、
・外国人観光客の誘致キャンペーンを展開するなど、官民一体の観光態勢の強化を図るべきです。
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